食道癌と自然体で向き合う [Living Naturally with Esophageal Cancer]

人生は不公平極まりないが、すべての命は例外なく尽きる。そんな当たり前のことでさえ、我がこととは無縁と生きてきた。生を受けてからすでに半世紀を超え、着実に死に向かっていることに意識を向けることもないまま、告げられた宣告。ここに綴った文章がどこかの誰かに役立てば幸いです。

陽子線治療を終えて

ひと月近い兵庫県の山奥での治療生活を終え、大阪の住宅地に戻って来てはや一週間が過ぎた。

「食道癌は15回」という照射回数について、当初は、個人差や癌の進行度合いなど色々と吟味する必要があるだろうに、ずいぶんと適当なと思っていたが、私の場合、ほぼ絶妙な回数だったと認めざる得ない。

11回目後の内視鏡で肉眼でなくなっているのをさらに四回照射したのはほぼ根絶治療とみていいだろうし、背中の皮膚の炎症もこれ以上当てると水ぶくれが潰れて皮膚科に通う寸前で終った。

以後の食物を呑み下す違和感は、そのままだ。食道の太さがふたまわりほど縮んだような感覚で、細かく噛み砕いて呑んでも、飲み物、自分の唾でさえ、窮屈な感じがする。

まずは炎症を起こしている食道を元に戻すことだが、与えられている円滑剤のような飲み薬はさほど効果はなく、ただ現状よりも悪くならないようにするもののようだ。

医者からは、食道が傷つかないよう、辛いものなどの刺激物や熱いものは控え、堅いものはよく噛み砕くように言われたが、向こう半年から一年は用心するように言われた。

なんとそれまでずっと寿司はわさびヌキである。子供か!

施設で食道癌患者は私で十二人目ということで、ほとんどデータというほどのデータはなく、陽子線の副作用がどんな形ででてくるかもまだよくわかっておらず、それも半年後までという。

とにかく元の身体に戻すのが第一なのだが、血圧は上が100前後、血液は低いレベルで安定という状態のまま。ちょっと動けばすぐに頭がくらくらするので注意している。

週明けに医大の担当医と会って、今後について話し合う予定だ。