食道癌と自然体で向き合う [Living Naturally with Esophageal Cancer]

人生は不公平極まりないが、すべての命は例外なく尽きる。そんな当たり前のことでさえ、我がこととは無縁と生きてきた。生を受けてからすでに半世紀を超え、着実に死に向かっていることに意識を向けることもないまま、告げられた宣告。ここに綴った文章がどこかの誰かに役立てば幸いです。

今年最後の診察

今日は血液検査だけ。月曜の午後、普段の半分以下の患者数に少々驚く。そのおかげでいつもは5、60人ほど待たされるのがわずか10人で順番が回って来た。

おそらくいままで一番手慣れたおばさんがさっさと採血をしてくれる。
「かぶれたりしないですか」
定番の質問のひとつで反射的に「ないです」を答えてしまう。

以前はなかったことなのだが、最近、血止めのシールにかぶれるのだ。ここしばらく突然全身のあらぬ場所に蕁麻疹が出ることに関係していると想われる。ただ、これは長い人生のなか、ときにそんな症状がしばらく続くことがあったので、きっと体調万全ではないためと割り切っている。ときにひどいときはオロナイン軟膏を塗っておけばしばらくするとおさまる。

担当医はディスプレイを観ながら「はい、問題ないです、心臓もだいじょうぶ」

後で、妻と「血液検査で心臓もわかるんかいな」と、聞き過ごしてしまったことを後悔。

胸の不快感はここ一週間ほどでかなりよくなっている。ネットで調べたが、おそらく肋間神経痛ではなかったか。放射線療法ででてくることがあるらしい。肋間神経痛の原因そのものが特定されておらず、身体を冷やさないことが最も効果的らしい。

これは癌も同様なので、寒くなって以来、ずっと腹巻きに使い捨てカイロを入れて生活をしている。

食道や胃に特に問題はないので、睡眠薬の処方箋を頼み、来月、三ヶ月に一度のCTスキャンの予定を入れ、帰り際に前回のCTスキャンの結果を焼いたDVDをもらう。

粒子線センターでは、退院後、患者のフォローに経過観察の検査結果を送ることになっている。それはいいことなのだろうが、退院したときにもらった分厚いファイルに検査結果を入れて送り、こちらからの質問に知らない医者による数行の意味のない返答と共にが戻ってくるというやり取りは前時代的の手法であり、つくづく非効率だと想う。