食道癌と自然体で向き合う [Living Naturally with Esophageal Cancer]

人生は不公平極まりないが、すべての命は例外なく尽きる。そんな当たり前のことでさえ、我がこととは無縁と生きてきた。生を受けてからすでに半世紀を超え、着実に死に向かっていることに意識を向けることもないまま、告げられた宣告。ここに綴った文章がどこかの誰かに役立てば幸いです。

縫合不全

手術(12時間以上)を受けてひと月が過ぎ、私はまだ入院している。

当初の経過は良好と思われたが、飲み物を飲んだところで高熱が出て再検査。

縫合不全。

手術に際して最も怖れていたこと。長期戦を覚悟するように主治医に言われた。

唾が患部と接触しないよう鼻の中に管を入れ、唾は容器に吐く。

問題となったのは、腸ろうから栄養剤を入れるのだが、ノルマの一日9パックを消化できないことだった。限界が来ると、胃が張って猛烈な吐き気に苦しまされた。そこで浣腸するという一時しのぎが数日続き、先生方の前で妻がキレた。

「全然良くならないじゃないですか!」

会議の結果、主治医は栄養剤の注入スピードを300に上げて見ようと提案(通常150)。するといきなり強烈な下痢が連発。そこでこの病棟で最も利発な看護師さんが250にダウン。この他にも彼女には様々なシーンで臨機応変に対処してもらい、感謝している。

以後この値を目安にしてから栄養剤のノルマがクリアできるようになった。

その後身体に繋がる管は次々に外され、栄養剤のノルマ増量が10日続き、明日造影剤の検査が入った。