食道癌と自然体で向き合う [Living Naturally with Esophageal Cancer]

人生は不公平極まりないが、すべての命は例外なく尽きる。そんな当たり前のことでさえ、我がこととは無縁と生きてきた。生を受けてからすでに半世紀を超え、着実に死に向かっていることに意識を向けることもないまま、告げられた宣告。ここに綴った文章がどこかの誰かに役立てば幸いです。

医者のスキル

先日TBSの特番『スーパードクターズ』を観た。御馴染みの脳神経外科医福島先生の巧みな技量は健在。74歳になられていまだあのタイトなスケジュールを平気でこなしておられることに感銘を受けた。

福島先生しか助けることができない命は世界中にある。先日亡くなった偉人・日野原先生は百歳まで現役を続けておられたが、福島先生にも頑張っていただきたい。

昭和大学病院村上雅彦教授のことは今回初めて知った。食道癌の権威で、胸腔鏡と腹腔鏡の併用による低侵襲な術式は先生の発明。私が開腹を回避できたのは先生のおかげである。

自動縫合器も初めて観た。通常、臓器を縫い合わせる場合、針と糸で繋ぐが、ホッチキスのように一瞬で縫い合わせることができる。私もその恩恵を受けた。

驚いたのは腹に開けた穴に手を入れたシーン。胃を引っ張り出して手で伸ばして管状にして戻していた。

さらに驚いたのは、手術に要した時間。

なんと3時間40分!

リンパ腺削除を入れてである。平均すると約4時間という。私の場合、3倍の12時間以上を費やした。8時間も余計に費やして私のドクターは何をやっていたのか。

単なるスキルのレベルの違いとしては、あり過ぎる。決してクレームではなく、純粋に強い興味が湧いた。

想像できるのは臓器の処置を体内でちまちまやっていたのではということ。それなら8時間余計にかかっても不思議ではない。

食道癌は胃癌や大腸癌と比べて術中術後の死亡率が高い。それだけドクターのスキルに依存している。2年前は直感だけで決断したが、次回があれば何であれ慎重に選択したいと思う。