食道癌と自然体で向き合う [Living Naturally with Esophageal Cancer]

人生は不公平極まりないが、すべての命は例外なく尽きる。そんな当たり前のことでさえ、我がこととは無縁と生きてきた。生を受けてからすでに半世紀を超え、着実に死に向かっていることに意識を向けることもないまま、告げられた宣告。ここに綴った文章がどこかの誰かに役立てば幸いです。

副作用3、陽子線治療

抗がん剤投与、放射線照射、抗がん剤投与と受けた後、様々な副作用に見舞われた。

 
一回目の抗がん剤後に悩まされた排尿障害は、今回は回避されたが、尿道が痛んでいることは放尿のたびにヒリヒリすることでわかる。一回目の後のように破れて出血に至らないよう、ドバッとださないよう、チョロチョロとするよう心がけている。
 
下痢にも悩まされたが、十日がたってようやく落ち着いた。
 
二回目の抗がん剤で合計10回以上も針を刺された両腕のうち、最後からふたつ前の点滴の際に打った針の後はいまもうっすらと黒ずんでいて触ると痛みが走る。一回目のように二の腕の下から心臓に向けてカテーテルを入れる方策をとるべきだったが、最初の点滴は病院の都合でできず、もう一回だけなら腕での点滴でもいいと判断したのが間違いだった。その後、二度三度と逆流して、やり直し、結局、五度の点滴。うち、最初の四度はすべて一回目に失敗されて(一回目の抗がん剤の副作用で血管が痛んでいたため)、両腕傷だらけである。
 
十日がたっていま最も悩まされているのが、血圧の低下。元々が貧血、低血圧の体質だが、普段なら130ある上が100あるかない日々がえんえんと続いている。当然、しょっちゅう、ふらつくので注意している。
 
通常なら、この状態で放射線照射のラウンド2を受けるのだが、私はここで陽子線照射を選択した。
 
放射線照射は皮膚に接触した地点から身体を突き抜けるまでに弱くなり、患部以外にも影響を与える。私の場合は、食道が患部なので、そのまわりにある肺、心臓、気管支などにも照射されることになる。
 
食道癌は消えたが、そのまわりの臓器が痛んでは、本末転倒。対して、陽子線は、患部にピンポイントで照射することができ、まわりの臓器への影響はほとんどない。
 
兵庫県の山間部にあるSPring-8に隣接したこの医療センターに入院して、今日、四度めの照射を受ける。
 
毎日の治療時間は20分程度である。うつ伏せになり、予め作っておいた固定具を嵌められて、じっとしているだけ。実際の照射時間は2分弱らしいが、何が起こっているかはわからない。
 
患者は50人ほど。個室もあるが、私は四人部屋。市内の病室よりは広くて快適。山間部にあるので、施設内外を患者がまちまちに散歩している。
 
入院前にみた、ある人のブログで、ホテル並みの食事と絶賛していたが、実際は市内の病院と大差ない。ちゃんと洗浄はしているのを目にしたが、超人的に匂いに敏感な私は容器が洗剤臭くて、味噌汁が呑めない。
 
ネットはデイルーム内でのみ使用可。iPhoneは施設内よりも屋外のほうが使える。