食道癌と自然体で向き合う [Living Naturally with Esophageal Cancer]

人生は不公平極まりないが、すべての命は例外なく尽きる。そんな当たり前のことでさえ、我がこととは無縁と生きてきた。生を受けてからすでに半世紀を超え、着実に死に向かっていることに意識を向けることもないまま、告げられた宣告。ここに綴った文章がどこかの誰かに役立てば幸いです。

治療後半年を迎えて

先月の定期検診に特記すべきことはなかった。有給をとった妻といっしょに出かけ、問診を受け、いつもの胃薬と睡眠薬の処方箋をもらい、近くの薬局でひと月分の薬をもらい、映画『ルーシー』を鑑賞し、食事して帰宅。

今月はひとりで出かけ、50人待ちで採血をし、検査結果が出るのを一時間半待ち、iPhoneのバッテリーがなくなると思ったところで呼ばれ、血液に異常はなし、来月はまたCTをしましょうと。

陽子線治療で副作用に気をつける期間は一年、特に半年後あたりがピークだと言われていた。いまがまさにその時期で、二週間ほど前から胸全体の違和感が多少きつくなってきた気がする。

それまでの食道や胃といった臓器そのものよりも胸のなかといった感じである。妻に「恋をして胸がきゅっと詰まる感じ」と説明するのだが、彼女はこれまでそんな感じになったことがないからわからないと言う。

いまこれを書いている半年前は陽子線の施設で8回目の治療を受けていて、一番きつかったあたり。イオンビームが強烈な放射で最後の癌を死滅させているとき、身体の方もかなり痛んでいたことは想像に難くない。

いくら陽子線はピンポイントだからといってその周りにまったく影響がないわけがなく、その影響は間違いなくいまも胸のなかにあるわけだ。

この違和感はなくなるのだろうか。一度、主治医に訊いたとき、「なくなるというよりは慣れる」と答えた。おそらくなくなりはしないのだろう。

食道に刺激のあるものやアルコホールは避け、食した後は、こまめに水を飲み、食道を伸ばす姿勢ですすぐ。

目眩の回数はずっと減った。体重も2キロほどもどった。

できることを続け、残りの半年まで何も起こらないように気をつけるだけだ。