食道癌と自然体で向き合う [Living Naturally with Esophageal Cancer]

人生は不公平極まりないが、すべての命は例外なく尽きる。そんな当たり前のことでさえ、我がこととは無縁と生きてきた。生を受けてからすでに半世紀を超え、着実に死に向かっていることに意識を向けることもないまま、告げられた宣告。ここに綴った文章がどこかの誰かに役立てば幸いです。

放射線治療

第一弾の抗がん剤投与が終ると二日かけて腎臓を点滴で洗浄。一日12回の小便は人生最多記録達成である(しかもいちいちが大量!)。

 
そして放射線治療
 
前もって胸一面にマーカーがつけられており、ハリウッド映画の人体実験に使いそうなSFぽい部屋のど真ん中にある寝台の上に仰向けになると、目の前に一メートル四方の円盤が見下ろしている。
 
「始めます」という声がしてジーッと静かな機械音。円盤の中心にある円のなかに食道癌の形状が現れるのがちょっとした見物だった。
 
最初は長いというが、ほんの15分ほど。最後に円体がぐるっと180度背中のほうにまわったのが、かっこ良かった。
 
といっても、早い話がこの治療は軽い放射能被曝である。ゆるい放射能を患部に何度も照射して癌細胞を殺してしまうのが目的だが、患部に至るまでの組織や周辺の臓器にも影響を及ぼす。
 
そこで私は、次回の治療に陽子線を選択した。